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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

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●(編集終了)石の民1(1989年作品)IT石の民「君は星星の船に変更

IT石の民「君は星星の船」の小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1873gf/

IT石の民「君は星星の船」■(1989年作品)石の民は、この機械神の統治する世界をいかにかえるのか? また石の民は何者なのか?

●(編集終了)SF小説■石の民「君は星星の船」■(1989年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

■石の民「君は星星の船」(1989年作品)■
第1章 詩人

 神殿はこの世界の中心地であった。この世界は光あふるる世界であった。この世界は機
械が支配し、生物は機械に従っていた。いつからこうなのか、誰もしらない。
機械神が機械の支配者であり、この世界の神であり、創造者であった。彼は自ら作り上げ
た予測機械で、この世を支配していた。

 機械神殿の予測機械はおそるべき予測を記録していた。機械神官の一人がそれを見る。
「いったい、これは」晴天の霹靂だった。
このデータは早急に機械神に伝えられた。
「このデータはまちがいないのだな」
「はい」
「対策を講じなければならん。この事いっさい他言無用だ」神は絶対者であった。

 神は神官に命じた。言葉巧なる者を選べ。その男を安全弁と昭。論理機構は一人の男の
データをはじきだしていた。
「神様よ、この男が選ばれたのですが、この男は危険なのです」
「どの様に危険なのだ」
「反政府分子なのです」
「が論理機構が、この世界で言葉巧みなるいものとして選んだ男なのだな」
「この世界で一番巧み名のでしょう」神は少し考慮していた。

 北の詩人は追いかけられていた。
 北の詩人は思う。機械神の支配に対する抵抗運動についての話しあいが終わったところ
だった。あの仲間の中に裏切り者がいたのか。だれが、私のことを管理機構に告発したの
か。詩人を始めとする悲機械人、つまり、生物は機械人の元で苛酷な支配を受けているの
だった。
 詩人は長い汚れたコートに深くくるまり、帽子をかぶり、コートの奥からしょぼついた
目をのぞかしていた。仲間のアボオイのところに逃げ込もう、あそこなら。道をいそぐ。
が、この道路はいきどまりだった。
 追跡機は直径2Mくらいのシルバーメタリックの球体で飛来してくる。この追跡機Z2
タイプは、その追跡物の体臭を手掛かりにおってくる生物体タイプだった。
 Z2はその追跡物の匂いをつかまえていた。その獲物は恐怖に囚われているらしい。ア
ドレナリンがにおう。生体の追跡物は必ずにおいを残す。Z2にはその恐怖の度合いが計
算できていた。Z2の機械の内部に歓喜の感情がおこっていた。
 追跡機は、まぎれもなく北の詩人をめざしていた。Z2は北の詩人の前に回り込み、中
央部の胴体部分からデジタルアイを突出させた。デジタルアイはその追跡物を恐怖に陥ら
せる。
「北の詩人だな」そいつは冷たい機械音でいった。
「人違いじゃないですか」詩人は無駄な抵抗をしていた。せめての抵抗であった。機械人
め。が追跡機Z2の方が一枚上手だった。
「君が北の詩人本人であることはわかっている。管理機構に君の画像を電送し、チェック
した。我々の主人のところに来てもらおう」「一体私をどこへ」
「決まっているだろう。機械神のところだ」
 詩人が連れて行かれたのは、機械神殿の中だ。機械神殿、この世界のすべてを支配する
所。謁見の間だった。チリひとつおちていないクリーンな雰囲気と外観、この内装はまる
で北の詩人がふつりあいであることを示していた。機械神が機械神官を2機つれて、詩人
の前に姿をあらわした。
 機械神官はヒューマノイドタイプ。背面から後光がさしている。機械神は黒いのめりと
した64面体だ。高さは50mはある。その物体が浮遊していた。
「詩人よ、顔を上げたまえ、神の前だが今日は特別に許そう」機械神官がいった。
 この世界に住む生物体で実際の目で機械神を目の前にできるものは数少ない。詩人もテ
レビの映像で神の姿を目にはしていたが、実際に目の前にすると、尾ぞけがふるった。こ
の巨大なるものと我々は戦おうとしているのか。詩人は自らの体の矮小さを感じた。ひざ
ががくがく震えた。恐怖心が体じゅうをかけまわっていた。
 機械神は突然しゃべりはじめた。
「詩人よ、君におおいなる役割を与えよう。君自身、想像もしなかった大きな役割だ。」機
械神の声は大きく、心にうちこむくいのとうに詩人に響いた。詩人は畏怖に気を失いそう
になる。
「機械神、私はちいさき者、ただの吟遊詩人にすぎません。ただただ、あなたさまの前で
はふるえるだけでございます。私にそんな大役がはたせましょうや」詩人はようやく、こ
れだけの言葉をはきだしていた。自分自身でも声がかすれているのがわかった。詩人は機
械神のそんな言葉に驚いていた。ねらいはどこにあるのだ。言葉の裏には何があるのだ。
「詩人とやら、隠すでない。君が私達、機械神に対する反政府組織の指導者であることは
調べがついている。だからこそ、私は君にある役割をはたしてもらいたいのだ」
 なぜ、神が我々の事を知ったのか。管理機構は組織をどの程度まで把握しているのだ。
さて、この機械神は何を私に命令しようというのだ。詩人は思う。
「考えているな。詩人よ、どうすればこの窮地を脱出できるかをな。しかし詩人よ、誰も
おのが運命から逃れる事はできはせぬ」機械神の体のそこここにスポット光があてられて
いる。神秘さが、増していた。
「詩人よ、おまえが自らの運命から逃れられないように、我々もまた、自らの運命から逃
れることはできぬ」
 次の一言が、詩人を驚かせた。
「詩人よ、我々の世界は滅びる。収斂するのだ」この神は私を驚かそうとしているのか。「は
て、いなことを。機械神の御言葉ともおもえませんが」詩人の心には猜疑心が芽生えてい
る。
 ひとりの機械神官がのべた。「お前が信じないのもむりはない。我々もいまだに、しんじ
られんわけだが。我々の予測機械がそれを予言したのだ。我々の滅びの時間をな」我々だ
と、その中には私たち人間も含まれているのか、それとも。
 詩人は思わず尋ねる。「滅びの時間ですと」「そうだ、それで我々は君をこの神殿に招い
たのだ」
「なぜ私を、私をどうしょうというのです」「君に新世界を作る材料になってもらおうとい
うわけだ」ひっかけて私から情報をとるつもりか、それとも私をパニックに陥れようとい
うのか。
 機械神から告げられたおもわぬ言葉に、詩人はたじろいだ。「私がキーマンですと、冗談
もやすみやすみに」
 が、詩人はあることにきずく。「ははっ、そうか、そういうことか、私をうまくだまして、
追放刑にしょうというわけですか」
「我々の論理機構は、このような非常時に冗談をいわない」機械神の言葉は、まさに機械
的だった。
 機械神官のひとりが、あわてていた。機械神をうながす。「神よ、我々は、その男を、は
やく処理しなければなりません」
「そうだな、我々にそう時間は残されていない」
「処理だと」何か手術を私に施すつもりか。「手荒い処理だがゆるせよ」機械神官の一人が
いった。もう一人の機械神官が何かを手にして詩人の方にちかずいてきた。
「何を  」詩人の体に電撃がはしった。詩人は、機械神殿で倒れている。神殿地下にあ
る研究室から、詩人の上に、処理機械が、飛んで来ていた。
 詩人は神殿の地下に連れて行かれた。地下も機械で張り巡らされている。詩人の体はカ
プセルにいれられていた。
「はやく、神の歌を頭に埋め込むのだ」神官がいった。
「わかりました」処理機械は答える。
「さて、この詩人のユニットが、いつ、どこにあらわれるかだ」神は悩む。
「彼の体に種子を埋めておきますか」処理機械がいう。「時間がくれば、発芽します」
「彼は、次の世界でのみずからの役割の大きさに、驚くだろう」神がつぶやく。
「それこそ、神の慈悲というものでしょう」神官の一人が言った。
「これが聖作機械B22です」処理機械はいった。
「このように、聖作はすすんでおります。どうぞご覧下さい」
 神の前に突然CRTが出現する、そのCRTに、ある種の機械がうつった。
「これが」
「聖砲です」
「これで星々を収めるわけか。で船の移動機構は」
「はい、事故にそなえてサブブレインを2つ聖作してあります」
「それがいいかもしれん。このごろの移動機構はあてにならんからな」
「おそれいります」処理機械がいった。

 この機械神の世界で、星々が次々と消滅していた。 詩人を失った反政府組織は、この
動きに観察者をおくりこんでいた。
ある時、反政府組織のメンバーが一室に集まっていた。観察者が報告していた。
「船が作られているらしい」
「どんな船だ」
「我々のみたこともないような船だ」
「その目的は何だろう」
「今の段階ではわからん。とてつもないプロジェクトがすすんでいるようだ」
 やがて、予告通り、世界は収斂した。この世界の星々は完全に消えた。
 この空間は今はない。
 この世界を旧宇宙とよぶ。

 青い光が満ち溢れている。亜空間だった。星の光はない。旧宇宙はなくなって久しかっ
た。
 この亜空間を漂うひとつの飛翔体があった。虚船。この飛翔体がどんな材料で出来上が
っているのか誰もしらなかった。数しれぬ意識体がその船の中に詰め込まれていた。眠っ
ていた意識体のうち、幾つかが目覚める。
 そのひとつが隣の意識体に尋ねる。意識体同士がふれあっていた。
『おい、そこにいるもの、いるのだろう、お前だ。すまん、教えてくれぬか、いったい私
はなにものなのだ』
 聞かれた相手もそれが、なにかを聞いているは理解できた。しかし、それに対してどう
反応していいのか、なかなかわからなかった。いったい、しゃべるという行為を、どう自
分の体で処理していいのかわからなかったのだ。やがて、話し方がわかる。その質問に答
えることができた。
『わからないんだ。俺には、記憶がまったくない。お前こそ、何かしらんのか』
 つまりは、ふたりとも何も覚えていなかった。次々と他の意識体が目覚めていた。この
虚船の中でたくさんの意識体が、いまだめざめめずにうごめいていた。
一定の時間がすぎた。総ての意識体がめざめていた。彼らはそれぞれ、自分が何者である
か考え始める。
 ある時、皆が、叫んでいた。
『我々はどこにいくのだ。そしてだれなのだ』 いまのところ、だれもわからなかった。
だれも答えようがなかった。いまのところ。

 虚船のうえで時が流れた。時はこの船のうえでのみ、流れていた。多くの意識体は学習
していた。自分達が何であるかを。が仲間割れがおこった。意見をことにする人々がでて
きた。彼らはたがいに仲間をつくる。やがて、この船からいくつかの意識体が弾き出され
ていた。この破棄された者たちは、この亜空間で作業を始める。
SF小説■石の民■(1989年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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